2007年5月8日

情けなさ

情けない歌詞が好き、などというと誤解されることがある。
いわゆる「暗い歌詞」が好きなのだろう、と勘違いされるのだ。
「情けなさ」というのは、一体どいういうものだろうか?

池内紀というドイツ文学者・作家がこんなことを言っていた。
「ギャンブルが好きな人は、負けた後のあの情けない感じが好きで、ついやっちゃうんだよね」

つまり、「情けない」というのは一種の反省であり、相対化である。
悲しみとか苦しみとか怒りとか、そういうネガティブな感情を、そのまま表現するのではない。
「情けなさ」にかぎらず、こうした相対化によってもたらされるのは、
やはりユーモアだろうと思う。
大笑いするようなギャグではなく、そこはかとなく可笑しい、ユーモア。
だから、「情けなさ」はネガティブをポジティブに変換する一種の通路なのだ。

小さいもの、弱いもの、ダメなもの、美しくないもの……。
そういったものをたとえば「可愛い」と表現することができる。
それによって人々は、一般にネガティブな要素もポジティブに変換しているわけだ。
私にとって、「情けなさ」は「可愛さ」と似ているかもしれない。

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