2011年8月21日

ストーカーのやさしさ?

「カリニョーゾ」を訳すと「やさしく、愛情を込めて、愛撫するように」くらいの感じだろうか。ブラジルを代表する有名な曲だが、こんなに怖い歌詞とは正直思ってなかった。
とはいうものの、これには多分、時代や文化の違いなんかの事情もあるのだろう。
一方的に思いを募らせ、妄想を膨らませ、追いかけ、逃げるなと迫る。
今では「ストーカー的」ともいえる歌詞も、かつてはごくごく普通だったのかもしれない。
本来はその辺を勘案して穏やかに訳すべきなのだろうが、今回は面白いので敢えてそのままにした。

カリニョーゾ
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/carinhoso.mp3

なぜかな? 心が 幸せを 歌うよ
あなたには聞こえない? 感じないの? どうして
あなたは 逃げるの?

なじかは 知らねど 心が 微笑む
あなたには見えないの? 感じないの? どうして
あなたは 逃げるの?

愛する心 やさしい心 本当の心
あなたに伝えられたら決して逃げたりはしないはず
おいで 胸のなかへ くちづけ あふれるほど
そしてふたりの心は はじめておだやかな 愛に包まれる


ボサノヴァではなく、ショーロの曲として知られている。
楽器に苦手意識のある私にとって、器楽音楽であるショーロというジャンルは遠い憧れの存在だが、この曲は歌詞もついてて、ボサノヴァ系の歌手が歌うことも多い。
こんど、ライブをご一緒させていただく「けんはもよん♪」は、鍵盤ハーモニカ4人+パンデイロでショーロを演奏するというすごいグループらしく、私はびびっている。
そんなこともあり、この曲を訳してみた、という話でもある。

★live @ 奇聞屋
2011/9/1(木) 19:30~
出演:けんはもよん♪(中浩美,岡野勇仁,赤羽美希,林加奈,飯島ゆかり), OTT
Charge 700円+オーダー+チップ
場所:
奇聞屋(杉並区西荻南3-8-8-B1)予約03-3332-7724

2011年8月19日

夏らしい読書

マーク・トゥエイン『ハックルベリ・フィンの冒険』(ちくま文庫、加島祥造訳)
はずかしながら、四十になる前にようやく読めた……。
面白いとは聞いていたが、本当にいい。
罪悪感を抱きながら逃亡奴隷を助けてしまい、一緒に筏に乗ってミシシッピ川をどんどん下っていってしまう感じは、妄想王ドン・キホーテとサンチョの旅路に匹敵する、美しい情景だと思う。

それで、これを訳した加島祥造先生のことは、これまでも何度も書いてきたが(たとえばこれとか)、最近はこんな本も出ていることを知った。
加島祥造『わたしが人生について語るなら』
夏休み、こんな風に語ってくれるお爺ちゃんがいたら、孫は本当に幸せだろう。
こんな風に語ってくれなくとも、お爺ちゃんと過ごす孫は幸せである(なんのこっちゃ)。

3冊目は何が夏らしいかまったく不明だが、私にとってはなんとなくそのカテゴリーに入る。
ニック・レーン『ミトコンドリアが進化を決めた』
理科系で難しいからかな? 理由もはっきりせず、なんとなく読み始めたからかな?
あまり関係ないが昔、アメリカの高校で生物学の授業をとっていたことを思い出した。
ミトコンドリアはマイトコンドリアと発音してたな。



2011年8月11日

震災関連本?

本屋へいくと、震災関連本や原発関連本がたくさん並んでいる。
たぶん、一番早かった「関連本」を友人が編集した。それを聞いて私は誇らしく思ったが、自分自身はヘナチョコなので、この手の本をまったく手に取れずにいる。

でも、これだけはと思ったので買ったのが、
しりあがり寿『あの日からのマンガ』
震災本じゃなくて震災マンガじゃん、というわけで、期待した以上に素晴らしかった。
読むべし、笑うべし、泣くべし。

関係ないけど、震災後繰り返し流れた映像のなかで、津波とは別に印象に残ったのは「アメリカの女性ジャーナリストが、被災者のおっさんから煎餅を与えられる」という場面だった。彼女は大袈裟に「助けを必要としているのはあなたでしょう!?」と驚く。
妻が言うには、「あの煎餅は〈雪の宿〉に違いない」とのことで、しばらく私たちは〈雪の宿〉を食べたくなることが多かった。たまに店に置いてないと、みんな同じ気持ちで買い占めしているのだろうと想像した。

レベッカ・ソルニット『災害ユートピア』を読むと、あのジャーナリストがパニクってて、煎餅を与えたおっさんが落ち着いていたのが、実はすごく典型的な出来事であったことが分かる。
日本だけではない、世界のどこでも大災害においては人々は意外に落ち着いていて、利他的な相互扶助が広く見られる。パニックを起こすのは主にエリート層、離れたところにいる人、そして土地勘のない人だとか。
これも本屋で平積みされていたのだが、実は震災前の本。ハリケーン・カトリーナ後の話はかなり衝撃的。
すごくいい本だと思うが、長くてややまとまりに欠けるのが残念。そして、あまり言いたくはないが、翻訳がいまいち。
オアハカをオアクサカ、ソカロをゾカロなんていうのは、インターネット時代の今、編集者と翻訳者の手抜きだし、いかにも英語中心主義な感じ。

安部ねり『安部公房伝』
あとがきの最後に一文が加えられていた。今後、すべての本は「震災後の本」になるのだと思った。
ひさしぶりに安部公房を読んでみようと思った。



2011年8月6日

ありうる? ありえない?

想定外のことは起きるものだというのは、まあ当たり前の話で、私のようないい加減な人間が言ってもただの言い訳にしか聞こえないけど、カルトーラのような滋味溢れるちょっとこわもての人が歌ったりすると、異様な説得力をもってしまうというお話。

アコンテシ(ありうる)
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/cartola.mp3

いつもこの世は不思議さ
どんなことだって、ありうる
私の愛はもう終わった
君はきっと悲しむのだろう 泣くのだろう
心から愛していたけど 今の私にはできないよ
ただ嘘をついて暮らすなんて
愛しているふりなんてできないよ
ありえないのさ


ボサノヴァというより、サンバです。
しかし、「どんなことでもありうる」とか言っておいて、最後に「それだけはありえない」で終わる歌ってすごいよなあと思う。
*暑いので演奏や録音がいい加減なのはどうかお許しを。

2011年8月3日

鳥の鳴き声

最近、家にいても鳥の鳴き声がとても気になる。
大体はスズメやカラスだと思うが、違うのが数種混じっているようにも思える。
しかし、本を読んだりCDを聞いたりしてもよく分からない。

さて、ひさびさにライブなので葉書をつくった。やっぱり鳥です。
最近、ギターの調子がすごくいい。よいライブになると思うので(たぶん)、ぜひ聴きにきてくださいませ!


★日本語でボッサの会1
2011/8/18(木) start 19時頃~
出演: 加藤崇之柳家小春、OTT
Charge たぶん無料1000円か2000円+オーダー
場所: Aparecida (杉並区西荻南3-17-5 2F)
◆超絶ガットギタリストと江戸音曲の歌い手というほとんどありえない組み合わせで、日本語ボッサというたいへん光栄な企画。お店もブラジル音楽好きなら一度は訪れたい素敵なところです。

鉄道音楽?(ご推薦、お待ちしております)

リズムに乗るという経験は、他の何にもかえがたいものだ。
私の場合、もっとも古い「ノった」記憶は、もしかしたら電車の音かもしれない。
そんなわけで、「鉄道音楽」みたいなものが好きだ。
といっても、以下の4枚しか思いつかない(しかも最後の4枚目は最近買ったばかり)。

スティーヴ・ライヒ『ディファレント・トレインズ』
クラフトワーク『ヨーロッパ特急』
エグベルト・ジスモンチ『Trem Caipira』
ソハイル・ラナ『Khyber Mail』

ぜひ、あとひとつ見つけて「五大鉄道音楽CD」としたい。条件としては、
・旅をしているような気分になること。
・歌詞はないか、あっても単純なものであること。
・それなりの長さがあること(アルバムが望ましい)。
ご推薦、お待ちしております。

さて、今回買ったソハイル・ラナ『Khyber Mail』について。
どうも、パキスタン映画音楽の巨匠らしい。そして旅路はカラチからペシャワールを目指すらしい(タイトルの意味はカイバル峠郵便列車?)。
なんか今となってはきな臭いエリアだけど、ハッピーでチープな感じが素晴らしい。
ああ、旅行にいきたい。