2010年1月15日

マツリ・ダンスと松本ぼんぼん その1

何から書きはじめるべきだろうか。
大糸線の有明駅前にあるブラジル系ショップのことかな?
それとも、サンパウロで食べた薩摩揚げのこと?
あるいは、数年前から盆踊りの将来が気になってることかも?
もしかしたら、高校のときの友だちでブラジル人のホドリゴはサッカーやダンスが苦手だったという思い出話かも……。
なんにせよ、マツリ・ダンスがこれほど気になるのは、そういう前史もあったということだ。

細川周平『遠きにありてつくるもの―日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』という本については、前に少し書いた。この本によれば、ブラジルに渡った日系人たちはカーニヴァルやサンバというあちらの「メイン・カルチャー」にはいまひとつ馴染めず、細々と日本独自の芸能文化を楽しんでいたようなところがあるようだ(私の解釈では、やっぱ日本人にサンバはかなり敷居が高いのだ)。
もちろん盆踊りも、そんな日系文化のひとつである。だが、どうも三世の時代になって盆踊りカルチャーは変容を遂げ、日系人の外へまで広がりはじめたようなのだ。

この記事によると、北パラナの中心都市ロンドリーナ(Londrina=人口約50万)発の日系文化である「マツリダンス」が熱いという。

マツリダンスは、毎年9月に行なわれるロンドリーナ祭りで踊られる創作盆踊りで、15年ほど前に「ボンオドリ・ノーヴォ」(新しい盆踊り)としてこの地域ではじまったという。盆踊りを基礎にした振り付けにポップスやストリードダンスの動きを加え、日本のポップミュージック「松本ぼんぼん」、「島唄」、「ギザギザハートの子守唄」、「ランナー」など、ジャンルもテンポも異なる曲をアレンジしているのが特徴だ。生演奏をバックに男女の歌い手が歌い、お神輿を据え付けた舞台の上では祭り太鼓と踊り部隊が盛り上げる。



どうやら、こんな感じらしい。
(最近はここに書いてあるようなサンパウロだけでなく、バイーアあたりにも広がりを見せ、本家ロンドリーナでの祭りの参加者もこの記事以降さらに増えているようだ)

そして、ここで流れているのがが上記の「松本ぼんぼん」である。
「島唄」「ギザギザハートの子守唄」「ランナー」はまあ分かるとして、この曲は一体何なのか?
ブラジルの人気曲なのか……。





(よく見ると2つはバイーアの同じ場所みたいだけど)
いい感じで盛り上がっている。

さて、この「松本ぼんぼん」、私はまったく知らなかったが、信州出身の妻によれば松本ではかなりメジャーな存在だという。

ウィキペディアによると……。
略して、「松ぼん」というところが、ちょっと可笑しい。

それにしてもYouTubeなどの動画を見ると、毎年8月に行われているというこの祭りの様子は、私たちにはごく見慣れたものだ。
ただひとつ、ちょっと異様なのが曲調である(笑)。
リズムもアレンジも、盆踊りの伝統を完全に無視している。
浮き立つような楽しさは、ちょっと他にないのではないだろうか。
言葉で説明すると難しいが、あのノリノリな阿波踊りでさえ、地面に吸い付くようなベタっとしたところがあるのに対し、この洗練とはほど遠い「松本ぼんぼん」には、逆に地面から浮き上がるようなところがある。

ちなみに、MP3と歌詞はここにあるから、興味のある人はじっくり聴いてみてほしい。

私が聞いたところでは、松本というところはとても真面目な文化を大切にする土地柄である。たぶん、学問や伝統を愛する松本の良識派は、この曲を苦々しく思っているのかもしれない……。

だが、たぶん松本か安曇野あたりに出稼ぎにやって来た日系人は、この曲が延々とループされる夏の祭りに魅了されたに違いない。私はそんな風に想像している。
私自身も、いろいろ動画を見ているうちに、この曲が頭から離れなくなり、いつか絶対松本ぼんぼんに行くぞと心に誓ったのである……。
(次号に続く)

2 件のコメント:

pop128 さんのコメント...

ハジメマシテ

松本ぼんぼんを検索していたら
こちらのブログにヒットして
とても、興味深く記事を読ませていただきました。

松本ぼんぼんのリズムはサンバをアレンジしたものを聞いています。
私が通った松本の小学校の音楽会や吹奏楽の演奏でも“サンバブラジル”という曲をやったことを思い出して、何となく、私の中での松本とブラジルの接点を思い出しました。

こちらの"マツリ・ダンスと松本ぼんぼん その1"の記事が、とても興味深かったので
私のブログに記憶としてリンクして残させていただいても良いでしょうか?

OTT さんのコメント...

>pop128さん
はじめまして!
読んでいただきありがとうございます。
続編もまた書きたいと思いつつ頓挫しております(笑)。
ご出身が松本なんですね~。
リンク、もちろん歓迎です。