2008年9月10日

50周年と100周年

今年はボサノヴァ誕生50周年らしい。
ついでに、日系ブラジル移民100周年でもある。
どちらが社会的に重要かといえば、もちろん移民のほうだろう。

というわけで、こんな本を読んでみた。
細川周平『遠きにありてつくるもの--日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』



力作である。
第Ⅰ部では短歌や俳句、川柳といったものから日系人が抱いた祖国への「郷愁」を分析。第二部は、「借用語」「弁論大会」のほか、日本人とブラジルの先住民(ツピ)が同じ祖先をもつというトンデモ説を展開したおじさんの話など、「移民の言葉」がテーマ。第三部はオペラ『蝶々夫人』を歌った「バタフライ歌手」、カーニヴァル、そして浪曲といった芸能について。どれも、この本でしか読めない貴重な資料を紹介しながら、独自の視点で移民史を語っている。
音楽などを通して、ある程度ブラジル文化について関心のある人なら、たとえば「借用語」の用例や、日系人とカルナヴァルの関係は実に興味深いはずだ。もっとも、大戦後の「勝ち組負け組抗争」など、移民史やブラジル文化史について基本的な解説をすっ飛ばしているところもあり(他の本で読めということだろう)、いきなり一冊目として読むには暗黙の前提としている部分が多すぎるような気がしないでもないが。
とにかく、私にとっては非常に面白い話ばかりなのだが、他人に勧めるには興味が個人的すぎるようにも思える。最後の浪曲の部分などは、読みながら、私もこういう「語り物」をいつか作ってみたいという思いを強くした(勝手にしろ!)。
あと、カルナヴァルの項で紹介されていた、日系移民をテーマにしたパレードの映像がyoutubeにあったので、備忘録的にリンクを貼っておこう。
(内容が濃すぎて、とりとめのない紹介になってしまい、すみません)



ついでにもう一冊。
しりあがり寿『人並みといふこと』




しりあがり先生は、私のなかでは同時代を感じつつ、心から尊敬できる数少ないクリエイターのひとりだ。リスペクトの嵐。
気軽に読めるエッセイ集。とはいえ、中身は結構暗い。本人は「スウィート・ネガティブ」とか言ってるが、自分でスウィートとか言ってていいのか(笑)? とも思うが、ご本人も苦笑しながら格闘している感じが素晴らしい。
(尊敬が大きすぎて、とりとめのない紹介になってしまい、すみません)

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