2007年11月7日

ソル・フアナ

ソル・フアナ『知への賛歌』(光文社古典新訳文庫)

文庫名なんて書かなくてもいいと思うんだけど、尊敬をこめて。
ロダーリ『猫とともに去りぬ』でこの文庫シリーズに注目し、『カラマーゾフの兄弟』が売れてると聞き、スゴイと唸った。
でも、さすがに、これが出るとは思わなかった。

弱小出版社でもいいから、訳はあまりよくなくていいから(旦敬介訳はもちろん素晴らしかった)、とにかくソル・フアナの詩集が読んでみたかった。
だから、感謝してもしきれないんだけど、本当はできれば詩の割合をもう少し増やしてほしかった……。
バロック的で私の理解が及ばないんだということは想像できるが、ここで訳された多分比較的分かりやすい作品から想像するに、この数倍分かりにくい作品だとしても、結構イケるんじゃないか。
まあしかし、詩集というだけで売れないらしいし、あまり贅沢は言えない。

実際問題、彼女の詩のよさをここで説明するのはちょっと難しい。
私が「ボサノヴァ日本語化計画」でやっていることにも通じるが、そこには私の誤読が大いに含まれていると感じるから。
だから、この日本では無名の作家を取り上げるのに、書簡2つを選んだというのは、それなりに正しい選択なのだろう。

女性なのに、修道女なのに、詩なんか書きやがって。
そういう時代の話。彼女はこれらの書簡で自己弁護を試みる。
それがなんとも言えず面白くて、機知に富んでて、軽やかで、深みもあって、そして時代を先んじていた。
それはまあ、そうだろう。
「私だけの部屋」をもてなかった彼女は、作家であり続けるために修道院に入った。
でも今を生きる男の端くれとして感じるのは、女性は今もこんな感じでキツい状況にいるよなあ、それに比べて男はテキトーなことを、不用意な差別発言を、軽率な自慢を、垂れ流しているよなあ、というようなことだ。

そんなわけで(どんなわけで?)、光文社文庫からは今後も目が離せない。

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