2007年7月20日

極悪人としての小説家

藤原章生『ガルシア=マルケスに葬られた女』



ガルシア=マルケスについては、前にこんな文章を書いた。

面白い物語をつくるためなら何でもする、そんないわばモラルを欠いた作家が、現実の事件を元にした小説を書き(『予告された殺人の記録』)、モデルたちを苦しめた。
日本では割と最近、柳美里の本が出版差し止めになった記憶があるけど、そんな感じだろう。
著者の怒りや疑問も、それなりにもっともである。
でも、まだ見ぬ被害者の女性への手紙という何やら思い入れたっぷりの形式には、最後まで馴染めなかった。

どう考えても「真っ赤な嘘」であるのに、もっともらしく書くことで、現実よりも本当らしい物語をつくる。
これが、ガルシア=マルケスの一番面白い部分だと思う。
だから著者が指摘するように、フィクションの名を借りた現実の歪曲や、ノンフィクション執筆時のでっちあげといった悪事と、深い関係がある。
その部分を、もっと鋭くえぐってほしかった。

ガルシア=マルケスがついた「真っ赤な嘘」のなかで、
『予告された殺人の記録』で女性が手紙を書き続けたエピソードは、それほど上手な嘘ではなかったように思う。
ついでに、『わが悲しき娼婦たちの思い出』が悲しき失敗作であるという見解にも同意せざるをえない。

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