2008年11月5日

じょうずはこわい



福岡伸一「できそこないの男たち」
タイトルで嫌な予感はあったのだが、前著に感心したので買ってみた。
感想は「上手な文章って危険だな」というもの。
(上手な演奏にも似たところはあるだろうが、文章ほど危険ではないかもしれない。)
最後のほう、男という存在についてあれこれ想像をめぐらせるあたりは、飲み屋の与太話なのだが、彼が書くと結構サマになってしまう。
男系による皇位継承の話に、チンギスハーン由来のY染色体が今も旧帝国の版図で8%も見られるという話が続くのは、ちょっと面白い。



逆に、文章がちょっとたどたどしいけど、そこがまさに主張と一致していて感心したのが、
後藤和智「おまえが若者を語るな!」。
私もオッサンになってきたので、「世代論」や「若者論」の大好きな人と飲み屋へ行ったりするようになった。違和感はありつつも、まあテキトーに流してきたわけだ。救いというか、より悲惨なのは、若者への批判は大抵私に対しても当てはまるので(笑)、私がヘンに若者を擁護することになってしまうことだ。
まあ、そんなこんなを考えると、「世代論」はなるべくしないほうがいいと私も思う。それが宿命論的な意味合いをもってしまうというのも、著者の言う通りだろう。とりわけそれを芸として利用してきた宮台真司やら香山リカへの痛烈な批判はもっともである。
そして、著者自身にいまいち「芸」がないところも、ある意味、この本の正しさを補完しているわけだ。

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