浅原昌明『ペルシャ細密画の世界を歩く』
この分野の概説書は、美術全集などを除けばほとんど皆無といっていので、大変ありがたい。
とはいえ、記述はかなり教科書的だし、いきなりこの本を読んでも訳がわからないかもしれない。
なので、ここでは私がこの世界に興味をもつようになったきっかけの本を挙げておきたい。
山田和『インド ミニアチュール幻想』
文庫になっていたのか! というわけで未読の方はぜひ。
美術を語ったものというより、骨董紀行みたいな感じ。
十数年も前に読んだ本だが、大英帝国時代のインドの地図について書かれた一あたりの情景がいまだに記憶の片隅に残っている。
オルハン パムク『わたしの名は「紅」』
こちらはノーベル賞作家による、トルコを舞台にした小説。
ペルシアじゃなくてインドとトルコ、それも紀行と小説じゃないか、というわけで、平易な解説書はありがたいわけである。
そんなわけでペルシア細密画の教科書的な話に戻ると、「七つの特徴」というのが書かれている。
それによると……
「六、地面の向こう側から人物の顔が、こちらをのぞいているように描写」とある。
「地面の向こう」とはヘンテコな表現であるが、確かにそんな状態。
なんというか、穴から上半身だけ出たモグラのように、背景にいる人々が向こう側からこっちを見ているという感じでユーモラスなのだ。
以上の記述は、別にペルシア細密画の神髄とはまったく関係がない。
西洋美術の世界に飽きてきて、こういう絵に惹かれるようになったのは、年齢かもしれない。
一方で、微笑を誘うような絵が好きといえるようになって嬉しいという感じもある。
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